『NHKスペシャル 女と男 最新科学が読み解く性 (3)男が消える?人類も消える?』を見て感じたこと(1回目)
昨日(2009/01/18)放映された,『NHKスペシャル 女と男 最新科学が読み解く性 (3)男が消える?人類も消える?』
はとても興味深いと同時にいろいろなことを考えさせられた。
番組の要約としては以下のようなものである。
恐竜時代に人類の祖先たるほ乳類が生き延びることができた要因の一つは卵を産むのではなくて胎盤の中で子供を育てることができたこと。その胎盤を作る遺伝子はY染色体の中に含まれている。
そして,人として高度に社会的文明を築くことができたのは,チンパンジーの様に乱婚ではなくて,原則一夫一婦でお互いの愛情を育んだり,他人を尊重したりする社会を築き上げてきたから。だが,そのことが逆に精子の競争力を低下させ,活動性を低下させて進化してきている。
そして,Y染色体は男性しか持たず,子孫に受け継がれるときに何らかのキズが付いたりした場合,X染色体はたくさんあるので複製修復されるが,Y染色体は複製しようがない.そこで傷ついたままのY染色体が受け継がれ,それが繰り返されてどんどん劣化していっている.
こうしたことからいずれY染色体が消滅し,男が消え,人類も消えてしまう可能性がある。そのために,様々な生殖技術などが研究,開発されているという.
つまり,人というのは,存在した瞬間から消滅が組み込まれていたというのである。
人が滅亡を内在した存在であるということが,宗教などの思想レベルではなくて,科学レベルで証明されつつあるということがとても興味深かった。
そして,私は職業上,これと似た話を思わずにはいられない。
それは不正咬合についてである。
人が文明生活を始めることができた大きな要因として火を使うことを発見したというのがある。火を使うことで食物を柔らかくでき,そのために強大な咀嚼筋が必要なくなり,脳頭蓋を大きく発達させることができた。その代わりに人は顎の発達を放棄せざるを得なくなった.
不正咬合というのは人以外の霊長類などにほとんど見られないが,それは,噛み合わせの悪い個体などは,そもそも補食することができずに淘汰されたためと考えられている。
さらに,ここ100年あまりの流通と食物加工技術の発達により,顎骨の退化とともに不正咬合が増加しているというのは,井上直彦・伊藤学而・亀谷哲也先生の『咬合の小進化と歯科疾患―ディスクレパンシーの研究―』でも明らかにされている通り。
つまり,人というのは,存在した瞬間から不正咬合が組み込まれていたとも言える。
矯正歯科の技術は,そのような背景の上に成り立っている.
人と人とのコミュニケーションが今後ますます重要な働きを担うであろう社会において,きれいな歯並びは競争力のある精子以上に競争力を発揮するに違いない。
この稿続く
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