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July 16, 2005

デーモンシステムを使わない理由

最近患者さんから『デーモンブラケットを使ってますか?』と聞かれることが時々ある.そんなときは,『デーモンなどは使ってません.もっと良いのを使っています』と答えることにしている.なぜ患者さんにブラケットの種類まで聞かれるようになったか?東京の某ドクターが仕掛けたと言われる読売新聞への広告(2005/5/22, 2004/11/22)であることは間違いないと思われるが、デーモンがそんなに良いものとは,私には到底思えないのである.

『ある特定のブラケット(デーモン)が歯の移動を早めたり,痛みを軽減するなどというデータを私はみたことがない』 ライル=ジョンストン(ミシガン大学 早期治療シンポジウムにおける講演で)

『私が今から言うことを皆さんよく覚えておいてください.デーモンブラケットというのがあるでしょう.今から2−3年もすれば,消えてなくなるでしょう.ブームというのはいつの時代もあるものですが,矯正学の原則は変わらないのです.』 トーマス=マリガン(メカニクス理論で有名なフェニックスの矯正歯科医 コモンセンスメカニクスのセミナーでの発言)

『彼は,デーモンを使えば筋肉によって歯列が後方に動くと言っているんだよ.でもそれはないでしょう.』ウィック=アレキサンダー(テキサスの高名な矯正歯科医,ベイラー大学 筆者との会話)

私は,デーモンシステムのコンセプトであるライトフォース(弱い力)・ローフリクション(低摩擦)というのが、歯の移動にとって効率的であることには全く同意する.しかし,セルフリゲーティングブラケット(結紮線を使わずに,ブラケットに組み込まれたキャップでワイヤーを固定するタイプのブラケット)だけが,そのようなコンセプトを実現するということではないし,むしろセルフリゲーティングの欠点も多い.特にデーモンブラケットはパッシブセルフリゲーションと言われるタイプで,これの問題点はトルクコントロールがしにくいということである.すなわちすべての歯は与えられた既製のアーチフォームに傾斜で移動していく.デーモン先生によると,ライトフォースだから筋肉が押さえることで歯列が後方に広がりを見せ,まるでリップバンパーの効果のように歯が並ぶとおっしゃっているが,彼の症例集(DamonSystem The Workbook; Dwight Damon著,星野亨,荒井一仁訳,オームコジャパン刊)をみると,残念ながら前歯がフレアしているケースが非常に多い.実際,彼のケースはコーケジアンで前歯を前方にフレアさせても許容範囲内なのだが,アジアンフェイスでこのように歯を動かすと口元が突出してしまうだろう.この前歯のトルクコントロールこそが日本人で非抜歯治療を行うときに最も難しいポイントだとおもうがこれをデーモンブラケットでコントロールする事が出来るのは,デーモンを使わなくても出来る矯正歯科医ではないか.

私がデーモン先生の症例をみた感想は,60点から70点くらいの治療結果を今までよりずいぶん楽に達成する方法だな,というものである.治療結果というのは100点というのはあり得ないにしても,90点以上のケースというのは私の師匠のグリーンフィールドを始め,セトリン・テン=フーブ・マリガン・アレキサンダーなど、ため息の出るようなケースを見せられることがある.私はそういうところを目指したい.


2006/2/15加筆修正

本文に一部誹謗中傷と取られかねない表現があるというご指摘を受けましたので,加筆修正いたしました.デーモンの利点も欠点も知り尽くした上でたいへん効果的に治療されている,非常に技術レベルの高い先生がいらっしゃいますが,私の上記の記事はデーモンを使っている事自体を玉石混淆に非難しているように受け取られかねない表現が混じっておりました.きちんとした診断と治療目標を持って本質的な事をマスターしている先生であれば道具は選ばずともきれいに治るでしょうし,そのような先生が,デーモンをうまく使えば大きな武器になるでしょう.
矯正歯科医にとってのブラケットの選択というのは,それまでに学んで来たバックグラウンドとしての知識や経験によってその時々のベストのブラケットというのがあり,一概にどのブラケットが良い(悪い)と言えるものではありません.そのドクターにとってはこのブラケットが一番使いやすく,従って結果も良くなるだろう,と言った言い方が正確でしょう.元々この記事はイースマイルに来院された複数の患者さんから,なぜ先生のところではデーモンを使わないのですか?という質問をされた事と,実際にデーモンシステムを使って他院で治療していてトラブルになった患者さんが相談に見えられた事がきっかけで書いたものです.単にデーモンが新しいから,とか,速いから,とか言う理由で診断もなくブラケットをつけても治るはずもありません.
デーモンシステム一般に対する私の考えは現時点では上記記事の通りですが,一部の真摯に治療されている先生方にご迷惑をかけたかもしれないと思い,ここに加筆修正するものです.

それでもデーモンシステムを使わない理由もどうぞ.

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Comments

成田先生,始めまして.イースマイル矯正歯科の有本博英です.
コメントありがとうございました.お返事遅くなりましてすみません.ちょっと冬休みで強制休養しておりました.お返事は少し長くなりそうですので新記事としてポストしましたのでご覧ください.

PS. ヴィジョンクエストのメルマガ,いつも楽しく拝見させていただいております.とても参考になります.

Posted by: 有本博英 | December 31, 2007 at 07:21 PM

有本先生、こんにちは。
自由が丘矯正歯科の成田と申します。

かなり過去のブログなので、現在はお考えも異なるかと思いますが、ローフリクションブラケットとこれまでのブラケットでは、歯牙の移動や矯正治療初期に感じる痛みに大きな違いが出ています。昨年の日本矯正歯科学会で成田が発表させて頂きました。
有本先生がどのようなスタンスで矯正治療に取り組まれているかはわかりませんが、海外の著名な矯正歯科医(デーモンも含めて)の言葉を鵜呑みにし、何の批判もなしに広めるようなことは一流の学者がすることではないように思います。すこし言葉が過ぎたかもしれませんが、デーモンシステムは上手く使えばこれまでよりも数段、患者さんのためになる治療を行なえるブラケットだと思います。ただ、デーモンの言うとおりに治療をしていても上手く治りません。パッシブセルフライゲーションブラケットでこれまで成田が確認している事実は
痛みの軽減
歯牙の遠心移動(これにはコツがあります)
顎間ゴムの効果が高い
これらは特徴として誰もが治療を行なえば実感できることだと思います。
現在成田は上顎にはクリアティSLを使用しています。このブラケットも少し特徴がありますが、使いようによってはかなりの良い結果をもたらすとたった2ヶ月の使用ですが、感じています。

Posted by: 成田信一 | December 24, 2007 at 09:46 PM

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» それでもデーモンシステムを使わない理由 [E-Smile, E-Life.]
約2年半前に書いた『デーモンシステムを使わない理由』という記事に対して成田先生か [Read More]

Tracked on January 03, 2008 at 01:07 PM

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